論点解説
ドローンの無線通信とアンテナ|電波の特性とフレネルゾーン
ドローン(無人航空機)は操縦や画像伝送を電波で行うため、電波の特性を理解することは安全運航の基礎になります。電波の性質、マルチパス、フレネルゾーン、アンテナの向きまで、学科試験で問われる論点を教則に沿って整理します。電波法の許認可については別記事で扱います。
電波の5つの性質
| 性質 | 特徴 |
|---|---|
| 直進 | 進行方向に障害物が無い場合は直進する |
| 反射・屈折 | 異なる媒質間を進行するとき反射や屈折が起こる。入射角と反射角は等しい |
| 回折 | 障害物等の後ろに回り込む。周波数が低い(波長が長い)ほど回り込みやすい |
| 干渉 | 2つ以上の波が重なると、強め合ったり弱め合ったりする |
| 減衰 | 進行距離の2乗に反比例する形で電力密度が減少(距離2倍で電力密度は1/4)。水中では大きく減衰 |
2.4GHzの電波は回折しにくく直進性が高いため、障害物の影響を受けやすいという特性があります。
根拠:教則 4.5(1)
マルチパス
マルチパスによって電波が弱くなり一時的に操縦不能になった場合は、送信機をできるだけ高い位置に持ち、アンテナの向きを変えて操縦の復帰を試みます。
根拠:教則 4.5(1)
フレネルゾーンとアンテナの高さ
フレネルゾーンとは、無線通信などで電力損失をすることなく電波が到達するために必要とする領域のことです。無線通信での「見通しが良い」という表現は、フレネルゾーンがしっかり確保されている状態を意味します。
- ◆送信と受信のアンテナ間の最短距離を中心とした楕円体の空間で、第1フレネルゾーンが電波伝搬で重要
- ◆フレネルゾーン内に壁や建物などの障害物があると、受信電界強度が確保されず通信エラーが発生
- ◆半径は周波数が高く(波長が短く)または距離が短くなるほど小さくなる(例:2.4GHz帯・5.7GHz帯、2地点100m離れたケースで2m以下)
- ◆地面も障害物となるため、フレネルゾーン半径を考慮してアンテナの高さを十分に確保する必要がある
根拠:教則 4.5(1)
フレネルゾーン半径の計算〔一等〕
カテゴリーⅢ飛行を行うにあたっては、電波と通信に関わる基本的な計算(周波数帯や送受信間距離を踏まえ必要となるアンテナの高さ等)を理解しておく必要があります。学科試験でも計算問題が出題されるため、式と例題の値感覚を押さえます。
関係式
これを整理すると R = √(λ × D / 4) となる。波長 λ は使用周波数 f との関係 λ = c / f で求められる(c は光速)。
例題:D=100m、f=2.4GHz
前提条件:
- 送受信アンテナ間距離:D = 100 m
- 使用周波数:f = 2.4 × 10⁹ Hz
- 光の速度:c = 3 × 10⁸ m/s
波長 λ の計算:
フレネルゾーン半径 R:
フレネル60%ルール
実際にはフレネルゾーン半径の60%以上のアンテナ高さが確保できていれば、障害物がない場合と同等の通信品質が得られます。
根拠:教則 4.5.1(6)1)〔一等〕
無人航空機で使用する主な周波数帯
無人航空機の運航で使用されている主な電波の周波数帯は、2.4GHz帯、5.7GHz帯、920MHz帯、73MHz帯、169MHz帯です。
電波の周波数帯や出力、使用するアンテナの特性、変調方式、伝送速度などによって通信可能な距離は変動します。
根拠:教則 4.5(2)。無線局免許の詳細は電波法参照。
電波の利用状況〔一等〕
電波の特性として、波長が長いほど直進性が弱く情報伝達容量が小さくなるが減衰はしにくい。逆に波長が短いほど直進性が強く情報伝達容量が大きくなるが減衰はしやすい。
極超短波(波長10cm〜1m/周波数300MHz〜3GHz)
無人航空機の制御用通信に多く使用される。直進性は強いが、多少の山や建物の陰には回り込んで伝わる。携帯電話、業務用無線、アマチュア無線、地上デジタルTV、空港監視レーダーなど幅広く利用。
マイクロ波(波長1〜10cm/周波数3〜30GHz)
直進性が強く、特定方向に発射するのに適する。衛星通信、衛星放送、無人航空機の画像伝送、無線LAN、気象レーダー、船舶用レーダーなどに利用。
根拠:教則 4.5(3)〔一等〕
送信機のアンテナの角度
送信機のアンテナから発射される電波の強さは、方向により異なる(無指向性のアンテナの場合はアンテナの周囲に対して同様に発射される)。アンテナの角度は調整できるので、操縦時の送信機の持ち方や無人航空機の位置を考慮して最適なアンテナ角度を設定する必要があります。
根拠:教則 4.5(4)
電波環境の調査〔一等〕
外来電波や他の設備・機器からのノイズにより無線設備の通信環境が不安定になることがあります。電波環境の調査として、スペクトラムアナライザを用いて、使用している周波数と同じ電波が現地エリアで使用されている状況や、他の設備・機器からノイズが発生していないかを確認する方法があります。様々な無線局が散在する市街地での飛行のためには、電波環境の調査は非常に重要です。
根拠:教則 4.5(5)〔一等〕
よくある質問
Q「マルチパス」とは何ですか?
▾
送信アンテナから放射された電波が山や建物などによる反射・屈折等により複数の経路を通って伝搬される現象です。反射屈折した電波は到達するまでにわずかな遅れを生じ、一時的に操縦不能になる要因の一つとなります。マルチパスによって電波が弱くなった場合は、送信機をできるだけ高い位置に持ちアンテナの向きを変えて操縦の復帰を試みます。
Q周波数が高いほど電波は届きにくいのですか?
▾
電波の特性として、波長が長いほど直進性が弱く減衰しにくく、波長が短いほど直進性が強く減衰しやすくなります。2.4GHzの電波は回折しにくく直進性が高いため障害物の影響を受けやすくなります。
Qフレネルゾーンとは何ですか?
▾
無線通信などで電力損失をすることなく電波が到達するために必要とする領域のことです。送信と受信のアンテナ間の最短距離を中心とした楕円体の空間で、第1フレネルゾーン内に壁や建物などの障害物があると受信電界強度が確保されず通信エラーが起こり、障害物がない状態に比べて通信距離が短くなります。
Qアンテナは何メートルの高さが必要ですか?
▾
実際には、フレネルゾーン半径の60%以上のアンテナ高さが確保できていれば、フレネルゾーンに障害物がない場合と同等の通信品質を確保できるといわれています。地面も障害物となるため、フレネルゾーンの半径を考慮してアンテナの高さを十分に確保する必要があります。
関連する問題を解いて定着させる
読むだけでなく、教則準拠の問題を解くと知識が試験で使える形で身につきます。
✏️学科試験の問題を解く関連する解説
出典:国土交通省「無人航空機の飛行の安全に関する教則(令和7年2月1日第4版)」を根拠に記述しています。最新・正確な情報は同教則および公式サイトをご確認ください。